2005.05.10 09:51

tokyo / japan

RCR LECTURE
Paisajes Internos 内面風景

武蔵野美術大学大学院
越後 正志


RCRアランダ・ピヘム・ヴィラルタ・アーキテクテスは、スペインのカタルーニャ地方を拠点とする3人組の建築家である。
4月25日、今回のレクチャーには、美術大学での講義ということもありデザイン系の学生のみならず、絵画、映像系の学生も多く参加し、レクチャーが始まる30分前には講義室は満員となり、開始時には立ち見を含め300人を超える多くの学生が集まった。


会場風景


EL LUGAR DONDE VIVIMOS, OLOT 私たちの場所・カタルーニャ・オロト
レクチャーは、彼らの創作の拠点であり郷里であるオロトの紹介から始まった。まずフランス国境にもほど近いスペイン・カタルーニャ北東部を捉えた山岳地域の航空写真が映し出され、次にピレネー山脈を奥にひかえなだらかに層を成しながら連なる山々、そしてその中に突然開けられた穴のように存在している盆地にオロトが位置している。人口は3万人、約40個の火山を持つこのカタルーニャ北東部の火山公園の中にあり、街の風景には、この地帯の火山活動によって形成された凹凸にカーブを描いた田畑や樹林、小川。そしてそんな風景の中にたたずむ古くらからの建築物が紹介された。どれもありのままの自然であるのに不思議と人工的に作られたような美しさを強くもって感じられ、この土地が彼らの原風景であり、建築家としての彼らのイメージの源泉であることを強く感じさせた。


アランダ氏


LA CREATIVIDAD COMPARTIDA 創造力の分かち合い
建築物がそれほど見受けられないこのような環境に国際的な建築家が拠点を持ち、そこを創作のベースとしていることに驚いたが、ラファエル・ヴィラルタ・ラモンの3人は、州都バルセロナからも150キロ離れた山々に囲まれた生まれ育った故郷オロトに、バルセロナで建築学校を終えて以来、事務所をかまえて活動を続けているという。メンバーの誰も実務を経験したことの無いまま始められた設計作業の中で、誰かが描いたものをもう一人が理解し、描き足し、時にそこから新しく描き始めるというスタイルが作られていった。最初の日本滞在を終えた後、オロトに戻った彼らが、その当時、事務所に一つだけおかれていた机に向かって、3人代わる代わるペンを持ち描いていく様が映し出される。
続いて多くの水彩で描かれたドローイングが見せられた。どれも直感で描かれたように見えるが単なるイメージを示すものだけでなく、建築、敷地の周辺環境などデザインのプロセスをみせるものもあり、スケールの異なる様々なアイデアを何枚も描いて重ねていくことで探りながら、イメージを押し広げ、建築のデザインのみならずそのまわりの環境、土地の場所性も理解していこうという姿勢が見てとれるものであった。
そこからつくられる彼らのプロジェクトの多くはオロトにあり、風景の中に寡黙に、そしてシンプルに佇んでいる。「彼らの作品の一つ「ベイジング・パビリオン(BATHING PAVILLION)」では雨が降った翌日には濡れた鉄の床が周りの風景を映し込み、秋になると林から落ちた落ち葉により床に様々なパターンが生まれる。建築の中に、風景が現れるのである。彼らの言葉を借りれば「ディテールは自然の中、光、空気の中にある」ということだろう。また、レクチャーの中で「風景を切り取る」「空間の一部とする」といった言葉が多かったように、彼らの作品は彼らの建築空間に、周りの環境を取り込ませることがとてもうまく、彼らの建築は風景の一つとしてうまく環境の中にとけ込んでいる。
今回のレクチャーでは彼らの創作のベースであり生まれ育った街オロトと3人の共同作業の中で生まれていった創作へのアプローチの二つからRCRの「内面風景」を垣間見た思いである。

レクチャー終了後には学生から「僕たちはグループで課題をおこなうことがありますが、RCRとして3人で設計する上でのメリット、デメリットを教えてください」という質問があった時も、「共に大学で建築を学んできた仲間であり、感性が近いものがあり、デメリットよりもメリットの方が大きい」と設計を行う中で共にもつフィーリングをとても大切にしているのだなと感じられた。

今回はムサビOGの藤井香さんがRCRで働かれていて通訳としてスペインから同行された。懇親会での学生との対話も藤井さんを介して行われ、レクチャーで紹介されたRCRの作品の中には藤井さんが担当されたものもあって、学生たちはより率直に質問を投げかけられた。時間ギリギリまで一つ一つの質問に丁寧に答えてくださり夜10時が過ぎるまで藤井さんとアランダさんは多くの学生に囲まれていた。


アランダ氏、藤井氏